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重要文化財「道後温泉本館」の修理計画で湧き出た「逆転の発想」とは?

~インタビュー記事:愛媛県松山市の観光プロモーション事例 前編~

日本最古といわれる道後温泉(愛媛県松山市)。市民の浴場としてはもちろん国内外からも観光客が訪れ、道後温泉本館と道後温泉椿の湯の入浴客は年間100万人を超えています。

道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)

そんな四国の一大観光地に、新しい温泉施設「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」が2017年9月に誕生するのをご存知でしょうか?

道後温泉別館 飛鳥乃湯泉イメージ

※道後温泉別館 飛鳥乃湯泉イメージ
コンセプトは、聖徳太子の来湯などの伝説が残る飛鳥時代の建築様式を取り入れた湯屋。明治時代の近代和風建築の代表である道後温泉本館と対比し、二つの時代の風呂が楽しめる新しい道後温泉を目指し現在建設が進んでいる。
https://dogo.jp/onsen/asuka

実は、この別館建築の背景には、道後温泉の象徴でもある道後温泉本館保存修理工事がありました。改築から123年を迎え、重要文化財としての価値を損なわないために、避けて通れない保存修理工事。観光客の減少による経済的影響が心配される中、松山市がとった対応策とは?

松山市産業経済部 道後温泉事務所活性化担当の方々

お話を聞いたのは…
松山市産業経済部 道後温泉事務所活性化担当
主任 坪内 康太さん・主幹 山下 勝義さん・主幹 岡 健二さん

事実と異なる風評被害。観光客の減少の不安と対策とは。

道後温泉本館の保存修理工事を行うことが決まり、まず耳にしたのが「道後温泉に入れなくなるらしい」「新しく改修で変わるらしい」といった事実に反した風評でした。「実際、本館の保存修理工事といっても重要文化財ですからあまり変えられないし、変わらないようにしなければならないんですよ。」と語るのは、松山市産業経済部で一級建築士の肩書も持つ山下さん。基本的に工事中も営業は継続。予測される来訪者の減少は避けられないとはいえ、閉館してしまえば、「道後温泉本館」を目的にしているお客さんは絶対に来ない。そのためにどうするかという中で立ち上がったのが、道後温泉別館施設整備の構想でした。

「新しい施設を作るにあたり、様々な意見を聞きました。たとえば観光地だからもっと賑わったところにしたいとか、静かな秘湯のイメージがいいという人もいましたね。十人十色の考え方があったしそれは当たり前のこと。」と岡さんは振り返ります。約3,000年の歴史といわれる道後温泉の今後のイメージを良くも悪くも変えるかもしれない一大仕事。松山市としても、慎重になるのは当然のことでした。

リピーター獲得効果絶大!道後温泉×アート

引用:「街歩き旅ノ介 道後温泉の巻」山口 晃 道後アート引用:「街歩き旅ノ介 道後温泉の巻」山口 晃 道後アート2016公式サイトhttp://www.dogo-art.com/

道後温泉でアーティストが作品を展開するアートフェスティバルによって、ここ数年で道後のイメージはがらりと変わりました。以前、温泉地といえば団塊の世代の旅行先と思われていましたが、今では若い女性グループのほうが目に入るほど。さらには楽天トラベルが選ぶ「おんな一人旅に人気の温泉地ランキング第1位」も3年連続で獲得。他の芸術祭が会期限定である中、『道後オンセナート』や『道後アート』は通年で開催しているのもリピーター確保の効果は大きかったそうで、「いつでもやっているから、思いついたときに行ってアートが楽しめる」というタイミングが、他にない魅力になりました。

伝統工芸の技法を生かしながら現代アートとしても魅せる新たな手法

道後のアートフェスティバルの効果は、新たな試みも後押しします。道後温泉別館 飛鳥乃湯泉の建築にあたり、愛媛・道後のシンボルになる建物にと考える中、ロビーや浴室、休憩室には愛媛の伝統工芸を取り入れたアート作品の装飾にすることが決まりました。手漉き和紙、和釘、伊予絣、砥部焼、伊予水引など、様々な伝統工芸士などが手がける装飾には、伝統工芸の技法を生かしながらも、最先端のアートとしても魅せるその新たな手法が取り入れられています。
「愛媛県内を回り、道後温泉にまつわる太古の物語をテーマに新たな作品を制作してほしいと伝統工芸士に相談しました。最初は断られると思っていましたね(笑)。彼らは作品も凄いのですが、伝統工芸に対するこだわりや技術が凄い。しかしそれ以上に、新たな挑戦をしたいという思いがとても強い人たちでした。結果、道後温泉の新しいシンボルになる施設に一役買えるならと快く引き受けてくださいました。」と山下さん。道後のもつネームバリューが、職人の心を動かしたんですね。
※道後温泉別館 飛鳥乃湯泉で見られる愛媛の伝統工芸についてはこちら
https://dogo.jp/onsen/asuka/craftsman

初心に返り道後温泉ブランドの魅力を徹底的に見直す

温泉の魅力だけでいえば、別府などのほうが湯けむりも登り、温泉地のイメージが強い。「道後温泉では、冷暖房もない古い銭湯に、早朝から、夏場は暑いなか屋外に並ぶ。多いときには商店街の中まで列ができる。温泉に入っても汗をかくのに。なぜみんな道後温泉にお越しくださるのか?」と岡さんは当時を振り返る。

道後温泉お風呂場

地元の人間だから気づいてない魅力も多いのでは?と、改めて初心にかえり、古い文献まで引っ張りだして徹底的に道後温泉の魅力を客観的に考えました。こうして「今後向かうべき道後温泉とは?」という構想を地元・地域の方々の意見を積極的に取り入れながら固めていきました。そして新たな名所を作るだけでなく、道後温泉自体の魅力を見直し、さらに観光地としてのにぎわいをつくることを目標に掲げました。この新たな道後を目指す動きこそが、いままで思いつかなかった様々なアイデアの源泉も沸きだすきっかけになったのです。(後編へ続く)

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ライタープロフィール

エリアシ編集部

梅木 俊成 《エリアシ副編集長》

BtoB/CRM/DMP/オムニチャネル/通販/EC領域を中心に、半導体や製薬、アパレル等
様々な業界でデータ分析に基づいた戦略設計・戦術プランニングから実施・効果
検証までワンストップで担当。近年はHubSpotやPardot等のMAやSFA導入に注力。

大阪市インキュベーションアドバイザーとしてベンチャー企業の支援を行う(ほぼボランティア)。学生時代はスリムだったが、現在は体重0.1t。ライザップのCM出演オファー待ち。

  • ※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
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