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「住民が育て、発信し続ける」 ~地方自治体ホームページ リニューアル制作から学ぶこと

ゼッタイ成功させたいサイトリニューアル 行政編

第38回 広島広告企画制作賞 インターネット広告部門 銀賞受賞の「広島県坂町ホームページ」制作の裏側に迫る

広島県安芸郡「坂町(さかちょう)」は、人口約13,000人・約5,800世帯の、広島市と呉市に隣接する町です。広島湾に面し、海と山の自然が身近にありながら、JRで広島駅からわずか20分弱の距離感。生活は自然のそばで、仕事は都市部で。そんな暮らしも可能な立地です。
「よいところはたくさんある、でもうまく発信できていなかった」。そう語るのは、坂町役場総務部・企画財政課の車地課長。地方創生の取り組みのひとつとして、まずは町役場が主体となり、行政ホームページをより魅力的なメディアへと生まれ変わらせようと構想をあたためていました。
そして、デジタルマーケティング視点を持ったホームページでしっかりと町の魅力を発信できる基盤をつくる試みは、2015年(平成27年)12月にスタート。公開まで約1年をかけたプロジェクトの裏側に迫りました。

会議風景

とにかく評判がわるかった! 以前の坂町ホームページ

「無機質な以前のホームページは、スマートフォン対応していないこともあり、町民だけでなく町役場内でも不評でした」と、本音を語る車地課長。そのうえ、使っていたシステムが古く、専門的なHTMLの勉強が必要だったのもあり、更新作業は常に煩雑を極めていました。
そのため、まずはWEB関連のトレンド情報を集め、町役場内で何度も議論を重ねて町議会にも説明し、最終的に新しいホームページに求める役割を大きく3つに分けることにしました。
1)行政の情報を発信する、町民のインフラとしての「行政ページ」
2)坂町へ遊びに来る人を増やすことを目的とした「魅力発信ページ」
3)坂町に住むきっかけづくりをし、同時に空き家対策となる「定住促進ページ」
さらに、HTMLの知識がなくてもタイムリーに情報更新できる「CMS(コンテンツマネジメントシステム)」の導入も、リニューアルの大きなポイントとしました。

めざしたのは、「坂町のみんなで育てる」ホームページ

「カッコいいだけのサイトならいくらでもあります。大切なことは、新鮮な情報を発信し続け、見る人にとって魅力的であること。決して町の独りよがりになってはいけないのです」と車地課長は続けます。
その取り組みは、ブログ形式で常に情報が更新できるシステムにしたこと(CMS:コンテンツマネジメントシステム)、スマートフォンでも見やすいレスポンシブ仕様にしたこと等、技術的な部分だけにとどまりません。アンバサダー(「大使」の意:アンバサダーマーケティングでは、ブランドや商品を自発的に応援する顧客のことを指す)を町民に公募し、継続的に情報発信する基盤をつくった点では、非常に地道な努力があったといいます。
車地課長曰く、「坂町には、目立った観光資源はないかもしれない。でも海や山をはじめ、日常のちょっとした出来事や季節を感じるような出会い、まつり、人、そしてウオーキングにマラソン、ビーチスポーツといったイベント等…ひとつひとつは小さなことですが、年中魅力にあふれている。これを町民目線で伝えていくことが、ホームページリニューアルの本当の狙いなのです」

アンバサダー向け動画撮影講習会風景
(写真は、アンバサダー向け動画撮影講習会風景)

では、ホームページリニューアルのプロポーザルではどのような提案があり、どういった点を評価したのでしょうか。プロポーザルの仕様書は、どうしても守らなければいけない決めごとの部分(アクセシビリティ要件等)と、自由に提案してほしい部分(企画性・表現面・新たな取り組み等)があります。
「選定するうえでは、“一過性で終わらないホームページを提案してくれた方”にお願いすることにしました」。そうして、複数社の提案の中から「町民を巻き込んだアンバサダーの取り組みとその講習会、SNSを活用した専門的なデジタルマーケティングの知見があるところ」、そして「専門の担当者が町役場に通ってくれるところ」を評価し、採用しました。
その結果、2016年(平成28年)12月にサイトをリニューアル公開して数カ月ですが、公開前後でのサイトの状況は、Googleアナリティクス上の数値比較で、1月~4月対比
・セッション数 105%
・PV数 114%
・直帰率 50.47%⇒41.58%に改善
と、おおむね改善されています。
「このプロジェクトの評価は、見た目の刷新ではありません。行政ページにおいては、町民に使いやすいインフラであること。魅力発信ページやSNSでは、旬な情報を積極的に発信できる仕組みがあること。定住促進ページにおいては、不動産情報ではなく住む魅力を伝えることにあります。リニューアルにおける数値の改善には満足しているものの、今後も旬な情報を出し続けなければ意味がないのです」と、車地課長は繰り返してくれました。

サイトイントロダクション

クリエイティブから見る、リニューアルのポイント

それでは、坂町の魅力発信ページ「日帰りなさいませ坂町へ」や、定住促進のページ「すぐそこ、坂ぐらし。」 このキャッチコピーはどのようにして生まれたのでしょうか。
坂町ホームページのクリエイティブを手がけた電通西日本の後藤プランナーは、こう語ります。「坂町の魅力発信・定住促進のページは、町を日本全国に訴える“観光”よりも、“交流”が目的といったほうがよいかもしれません。コピーは、近隣の広島市民と呉市民に向けたもの。広島って、厳島や瀬戸内海の島々に気軽に行けますよね。坂町も広島駅から電車で20分弱で行ける場所ということで、広島市や呉から半日旅でちょっと遊びに行くのにちょうどいいことを、『日帰りなさいませ』というタイトルに込めました。『すぐそこ、坂ぐらし。』も、“移住!”と言うとハードルが高いけれど、すぐ隣の町に引っ越すような気軽さを感じてもらえたら、と考えました」
そのほか、町の魅力を直感的に伝え、楽しそうな場所だと感じてもらうため、「日帰りなさいませ坂町へ」のページで導入した坂町の四季の風景を切り取ったチルトシフト動画や、情感をふくらませるBGMが流れるしかけは、親しみがあふれる秀逸なものになりました。

まとめ ~行政のメディアを住民が育てること

このように、坂町のホームページリニューアルプロジェクトは、単なるデザイン上のリニューアルではありません。町民が育てるメディアをめざして、「行政」「魅力発信」「定住促進」いずれのページも町民から記事を集約して継続的に更新できる仕組みづくりをしたうえで、その情報をSNSで発信し続けているのです。
ホームページの公開から約5カ月。担当した坂町企画財政課のメンバーは、町民から嬉しい声を聞くことも多いそうです。さらには、今年5月に発表された「第38回 広島広告企画制作賞」では、インターネット広告部門で「銀賞」を受賞。これからの運営にも大きな励みとなりました。
住民が育てる行政のメディア。坂町の取り組みから学ぶことは、きっと多いのではないでしょうか。

ライタープロフィール

yamaguchi

山口 ユウジ《エリアシ副編集長》

株式会社電通西日本 デジタル&ダイレクト推進部
兼株式会社電通デジタル・ネットワークス プロジェクトフェロー
移動体通信クライアントの営業を長く担当したことでマス~ビローザラインまで幅広く経験。
現在ではSEMを中心としたインターネット広告のローカル市場の開拓が任務。
学生時代はサザンが創設したことで知られるサークル「ベターデイズ」に所属。

  • ※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
  • ※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。
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